近年、製造工程データが多く取れるようになり従来のSQC分析では対応しきれないシーンが増えてきました。現在、そういったシーンでは多変量解析が使われています。
多変量解析を使うことで、勘や経験で得ていた情報が定量化できます。また今まで分からなかった関係性を見つけることや、将来の製造の予測を行うことも可能となりました。
ただ、多くのお客様から聞くのは「多変量解析と言ってもどういった手法があるかわからない」という不安の声が多いです。
本日はその多変量解析の各手法についてご紹介します。
主な多変量解析の手法
多変量解析は大きく3つに分類できます。
最も有名なのは、「③:予測」に分類される「回帰分析」でしょうか。
過去製造データを回帰分析にかけることで、将来の予測ができたり、制御、影響度の調査ができます。
今回はこの③つの分類に従って説明していきます。
①:要約
大量の因子データを数学的に処理し要約します。
例えばとある材料加工工程には30程度の変数が存在していたとします。それら加工条件によって最終品質が変わってくるのですが、どこから手を付ければよいか分からないことがあります。そのような時に要約すると、30変数を大きく5~10変数程度に要約します。すると、加工条件の傾向が容易に掴めるようになります。結果、改善ポイントを見つけやすくなります。
その時、要約することで情報量が減ってしまっては意味がありませんが、元のデータが持つ情報量は極力落とさず変数を要約していきます。
もちろん要約できる上限はありますが、似たような変数をまとめることで情報量を維持したまま変数を減らすことができます。
化学系ですと加工条件が多かったり、途中の加工がブラックボックスになっていることがあるので、データを要約することで何かしらヒントを得ることに使用しています。
また要約したデータを回帰分析などに活用して、予測の精度を高めることにも使われます。
要約で代表的な手法は「主成分分析」になります。
主成分分析の活用については次のブログで紹介します。
②:分類
分類は上の要約に似ていますが、応答データが含まれているデータに対して使われます。
先程の加工工程30程度ある例だと、応答が材料の収率だとします。収率に影響している変数を分類します。例えば大きく3つに分類すると、A、B、C。さらにAに分類された変数に影響を及ぼしている変数の集まりもあるはずです。
このように似た変数同士を分類していきます。
似たような変数が分かれば管理しやすくなります。
これを活用することで、収率を上げるためにはどこから手をつければ効率的か判断ができるようになります。つまり予測の手法にも役立ちます。
要約で代表的な手法は「クラスタリング」になります。
クラスタリングについてもブログで紹介します。
③:予測
ものづくりおいて大切なのは品質を高めるための改善にあります。
ただ改善がどの程度効果があるのかは作ってみないとわかりません。ただ作って失敗することもあるので、予め予想を立てておく必要があります。
そこで役立つのが予測です。
例えば加工条件を1つ変更する時に、変更後の収率がどれくらい変化するかを過去データを使って予測することができます。
過去データからモデルと呼ばれる数式を作り出し、因子が1変化すると応答がどれくらい変化するかを予測します。
過去データと言っても、試作実験では10データほどしか無い場合もあれば、過去の量産データであれば数万とある場合もあります。
そこでこの予測においては、単に値を予測するだけでなく、その値がどれくらいのばらつきを持つのか、そもそもモデルの精度はどれくらいなのかまで調べることができます。
この精度が高まれば、製造条件を変える前にどのような結果になるかを見立てることができるので、手戻りが減ります。
要約で代表的な手法は「回帰分析」になります。
回帰分析についてもブログで紹介します。
まとめ
さていかがでしたでしょうか。
業務や目的によって適切な手法は変わってきます。
予測はやっているけど、要約はまだやったことがない方も多いと思います。
センサーの発展により取得できるデータ量が増えてきており、多変量解析を試されるお客様が増えてきています。これを機に多変量解析を試してみませんか?
これから各手法を紹介しますのでお楽しみにしてください。
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