先日は実験計画法を目的別に紹介しました。
その中で紹介した、タグチ計画について今回は分析例を紹介します。
タグチ計画について
改めておさらいしておきますと、
応答曲面計画などの実験計画は全ての因子を調整できた場合の結果となります。
ただ現実には製造中の制御が難しい因子や、変更にコストがかかる因子があります。
そのような因子を「誤差因子」と呼び、誤差因子の影響を最小限に抑えるパラメーター設計を考えるのがタグチ計画になります。
実際の実験時には誤差因子の値を振りますが、実際製造するときには調整できなくても、その影響が受けにくくなっているので、ばらつきを抑えた製造を行うことができます。
要因計画が因子の効果を少数のサンプルで評価することができる手法とすれば、タグチ計画はばらつきを抑えるために考えられた手法で、いかに問題を起こさないかという予防設計的な考えに基づいています。
日本人の田口玄一さんが構築してきた手法ということで日本での利用者は特に多い手法です。
タグチ計画の分析例
▼事例:ゴルフボール飛距離の最大化
あるゴルフ用品メーカーの技術者が、飛距離を最大限伸ばせるゴルフボールをデザインしようとしています。
技師はゴルフボールに関わる4つの制御因子と1つの雑音因子を使用します。
雑音因子は、ドライバーとアイアンという2種類のゴルフクラブです。それぞれゴルフクラブごとに飛距離を計測し、結果を記録します。
データ
実験回数:8回
▼制御因子
素材
直径
ディンプル
厚さ
▼雑音因子
ドライバー
アイアン
本データはMinitabファイルとして以下からダウンロードできます。
データ分析
統計解析ソフトMinitabで分析を実施した結果が以下です。
SN比の分散分析の結果から判断します。
4つの制御因子(素材、直径、ディンプル、厚さ)については全ての因子のP値は0.05より小さく、有意です。
素材*直径の交互作用はP=0.068ですが、交互作用は有意水準0.1とする場合が多く、その基準に照らし合わせると有意です。
また通常、F値は各因子の相対影響度を表します。例えば、直径のF値 = 76.94は最も値が高いので、飛距離に対して相対的な影響度が高いことを示しています。
SN比とは
SN比とは頑健性の指標となります。
雑音が応答に与える効果を最小限にする制御因子の設定を確認するために使用します。
タグチ計画では、2段階設計が推奨されます。
•第1ステップ
–ノイズに対する安定性の改善 →SN比を最大
•第2ステップ
–平均値を目標にあわせる →感度の調整
このノイズに対する安定性を評価する尺度がSN比となります。
SN比の結果
SN比の応答表の結果を見てみます。
応答表は各因子のそれぞれの水準の応答の平均値が表示されます。
デルタ統計量は相対的な効果の大きさを表しています。
先程の結果と同様、直径のデルタ=7.93は最大の効果を示しています。順位とはデルたちに基づいて割り当てられます。
タグチ計画ではSN比が最大になるようにします。
右結果では、直径の水準1(118)が最大を示しています。
次に厚さの水準2(0.06)、素材の水準2(液体)、ディンプルの水準1(392)と続きます。
ボールの飛距離最大化
今回の例は、ボールの飛距離を最大化することを目的としています。そのための組み合わせを見つけるために、平均の結果も合わせて見てみます。
平均に対する主効果プロットを見ていきます。
飛距離の平均が高くなる組み合わせは次のようになります。
•素材:液体
•直径:118
•ディンプル:392
•カバーの厚さ:0.06
タグチ分析を試してみる
いかがでしたでしょうか。
誤差因子の影響を最小限にするという、より実務に落とし込みやすい手法かと思います。
統計解析ソフトMinitabを使えばどなたでも簡単にタグチ分析を使いこなすことが出来ます。
非常に便利で強力なツールですので、是非お試しください。
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